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2013年8月 6日 (火)

山岡荘八「徳川家康」1巻・2巻

私の愛読書です。今回、5度目の読破を目指し読み始めました。

5度目ということで、もういい加減読み飽きたのではないかと思われるかもしれませんが、とんでもない。むしろこれまで以上に深く心が入っていくのであります。

初めてこの本を手にしたのが10代の頃でした。ただただ歴史を追うのが精いっぱいで、全26巻を読むのに大変苦慮しました。途中で何度も、中断と挫折を味わい2年近くかかって読み終えた記憶があります。それから10年ごとに読み直し、そして今や50代。再びこの本を手にしました。

さて、1巻・2巻は、家康誕生から、駿府へ人質として送られていく期間が描かれているのですが、読んでいて、つくづく年齢を感じてします。読んでいるうちに目頭がウルウル来るのであります。歳を取ったのでしょうか、泣けるんです。目が涙で一杯になってくるんです。これまで4度読んだ記憶の中で、こんなに泣けた記憶はありません。

私のブログを読んでいただけている方はお気づきだと思いますが、私の読書時間は、そう電車の中なんです。電車の中で、涙で目を潤ませてる中年オヤジ、みっともないですよね。

何とか、周りに気づかれないようにとするのですが、しずくがポトリと落ちたときにゃあ、あんた、みっともないったらないですよ。うとうとと居眠りしたときに、ヨダレを垂らすのと同じくらいみっともないです。(いえ、ヨダレなんて垂らしてないですよ。ほんとですよ。マスクの中で垂らした事はありますけど・・くれぐれも内緒です。)

ところで、何が泣けるのかといいますと、「於大」です。家康の生母「於大」です。

若くして(当時は誰もが10代で嫁ぐのは当たりまえ)家康の父「松平広忠」に嫁いだものの、望まれて嫁いだわけではなく(いわゆる政略結婚)、すでに側室のあった広忠に疎まれ、受け入れられず、寂しい日々を過ごす於大。それでも忍耐強く愛情を注ぐことにより徐々に広忠の心を掴んでいく。ようやく夫婦の絆を築くとともに、家中の信頼をも勝ち取っていく於大。そして待望の世継ぎが誕生する。「竹千代」のちの「家康」である。しかし幸せな日々は長くは続かない。乱世とは、なんと惨い人生を与えるのであろうか。小国の定めとはいえ、お家存続のために、愛する夫との離縁、そして何よりもいとおしい子供と無理やり引き裂かれる無情。家中の者たちに惜しまれつつ城を去っていく於大。涙なくしては見られない情景であります。現代人が、浮気だの不倫だの性格の不一致だのと、我儘を言いたい放題言っての離婚ではない。誰からも愛され、誰からも信頼され、誰からも必要とされた於大が、乱世の犠牲となって愛する人々から引き裂かれていくのです。こんな悲しいことってありますか。於大には何の罪も無いんです。罪のない人間が犠牲となっていく、そんな理不尽がこの時代には当たり前だったのかもしれません。

離縁された於大は、間もなく松平家とは敵方(織田方・・当時松平家は今川方に組していました。)の武将へと再嫁を強いられます。これもまた無情。やがて、愛する我が子「竹千代」は今川家への忠誠を示すために、人質として今川家へ送られことになります。しかし途中、織田方に略奪され、囚われの身となってしまいます。織田家の囚われの身となった竹千代の命を救うため於大は、信長に命を懸けて助命をするのであります。信長に「命を助ける代わりに何かくれ!」と言われ「差し上げまする。母の心を差し上げまする。」と両手を差し出すのです。もちろん両手の上には何もありません。それを見た信長は「もらった!確かにもらった!母の心を。」そう言って、竹千代の命を保証することを約束するのです。目に見えない「母の心」を差し出す於大。それを見事に受けとる信長。感動的なシーンじゃありませんか。自然と涙があふれてきます。こんな深い愛情に包まれた家康だからこそ、天下統一を成し遂げることできたのではないでしょうか。

自分のお腹を痛めて生んだ我が子を虐待する昨今。現代には「母の心」はないのでしょうか?子供に対し於大ほどの愛情があったならば、子供たちはどんなに幸せなのかと思います。やがて於大と成人した家康が再会する日が来るのですが、それはまだ先のこと。今から再会劇が楽しみです。たぶん泣いてしまうと思います。

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コメント

初めまして、鷲谷と申します。

『徳川家康』についての記事を書いた際、のむさんの記事を参考にさせていただきました!

5回も読まれるとは、すごいですね!
僕は現在3回目の23巻を読んでいる途中です。

この小説は山岡氏の魂を「徳川家康」と「徳川家(松平家)」の人々に込めて書かれた超大作だと思っています。

なぜだか1巻で挫折される方が多い印象がありますが、そこを乗り越えてもっと多くの方に読んでほしいと思っています!

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